研究室概要

私たち水圏環境研究室では、水域の保全を目的に水域の調査、観測、解析などを行っています。
主な研究には、現在問題になっている諫早干拓事業が行われた諫早湾や、その周辺の有明海の水質の動態調査、解析のほか、化学工場からのメチル水銀の排出によって被害が出た熊本県水俣市において水質動態、水銀濃度変化の調査、解析を行っています。また、長崎県の河川の特徴として全国的の河川と比較すると河川勾配が急であり、そのため、県内にはすぐに流下してしまう水をとどめるために多くの遊水地やダムを有しています。本研究室ではそれらの閉鎖性水域の水質向上に向けた研究なども行っています。

研究の紹介

I. 閉鎖性小水域における上下循環装置を用いた水質浄化の研究


 図1. 上下循環促進装置

日本の河川は河川延長が短く,勾配が急であり雨水はすぐに海に流出されるという特徴を持っています。.さらに降雨量の変動が大きいため,頻繁に水不足が引き起こされています。その対策としてダムなどの貯水池を用いた雨水・再生水の利用が各地で行われていますが、その一方でダムや湖沼等の閉鎖性の強い水域では、外部との水循環や水域内の水循環が困難であるため、富栄養化、底層汚染や貧酸素などの水質悪化が懸念されています。また、水質改善を行うには莫大な浄化費用がかかり、安価で行われる水質改善対策が求められています。本研究室では、上下循環促進装置が与える閉鎖性小水域内の水質と流動への影響を把握と水質浄化効果の検証を行い、水質浄化効果向上に向けた装置の開発を行っています。





Ⅱ. 発展途上国向けの浄水処置および排水処理技術の開発


 図2. ビクトリア湖の水くみ風景

開発途上国には、安全な水資源を利用できない人々がいまだ多く、例えば、東アフリカのビクトリア湖岸の住民は直接に湖水等の表層水を採取し飲料水や生活用水に利用しています。ビクトリア湖では、場所によってはアオコなどの有毒藍藻(強力な発ガン物質ミクロシスティンを生産する)が増殖しており、住民の健康が脅かされています。水圏環境研究室では、こうした開発途上国向けの低コストな水処理システムを研究開発しています。具体的には、開発途上国で得られる身近な材料であるトウモロコシ(の非可食部である芯など)から作製した炭(バイオ炭)や、廃棄物である牡蠣殻などを用いた水処理システムと、それを簡易にモニタリングするための携帯電話のデジカメ等を用いたクロロフィルa簡易測定手法を研究開発しています。

その他の研究

○衛星からの蒸発散推定による耕作地モニタリング


○人的活動が有明海干潟の底質に及ぼす影響に関する研究


○長崎発コンクリート護岸河川の自然再生技術の開発・効果定量化


○宇宙生活圏の確立のためのマイクロコズムを用いた閉鎖系生態システムの安定性の研究